歯磨き粉について

   

大阪市天王寺区にある歯医者 上本町プラザ歯科の歯科医師山本です。

今回は皆様にとっても身近な歯磨き粉(歯磨剤)の基本成分についてお話します。

手元に歯磨き粉があれば、パッケージの裏面や外箱をご覧ください。

じつは歯磨剤の成分は「基本成分」として、主に、湿潤剤、清掃剤(研磨剤)、発泡剤、粘結剤(粘度調整剤)、香味剤、保存剤に分類されています。

これらがどのような役割を果たしているか、特徴と合わせて詳しく解説していきます。

①湿潤剤

はたらき:歯磨剤に湿り気を与え、ペースト状に保つ

主な原料:ソルビット液、濃グリセリンなど

湿潤剤がないと、ペーストがすぐに乾いて固くなってしまい、チューブの開閉がうまくできなくなってしまうほか、固い塊なので、そのままブラッシングすると痛く感じてしまいます。

原料のソルビット液と濃グリセリンは水になじみやすく、どちらも私たちの身近なものに使われています。

ソルビット液に含まれる「ソルビトール」は味がよいため、なめると冷たく感じるキャンディーに、グリセリンは化粧水や乳液、クリームなどの保湿剤として使われています。

喉の塗り薬などにも使われていて、熱感をともなう強い甘みはグリセリンによるものです。

ソルビトールに比べると甘みの質が好まれないため、単独で使用されることは少なくなっています。

②清掃剤(研磨剤)

はたらき:コーヒーやタバコなどによる外因性の歯の着色汚れ(ステイン)を除去し、本来の歯の色を保つ・プラークを除去する

主な原料:炭酸カルシウム・含水ケイ酸・無水ケイ酸・リン酸水素カルシウムなど

清掃剤は以前、研磨剤と表記されていました。

そのため、「歯を削りながら汚れを取る」という誤解を受けることもありました。

厳密にいえば、ほんの少し摩耗しますが、歯の健康に影響しない程度のものです。

液体ハミガキには清掃剤は含まれていませんが、ジェル状の歯磨剤には含まれているものといないものがあるので、確認しましょう。

清掃剤がないと、着色汚れなどを除去できないため、歯が黄ばむことが多くなります。

③発泡剤

はたらき:口腔内で歯磨剤を泡立てる・プラークをやわらかくして除去しやすくする(分散)・香料など水に溶けにくい成分を歯磨剤の中に均一に溶かし込む(可溶化)・除去したプラーク等を包み込んで再度の付着を防止する・歯肉へのダメージを軽減する

主な原料;ラウリル硫酸ナトリウムなど

歯磨剤が泡立つことで、有効成分が口腔内のすみずみにまで行き届くだけでなく、歯肉へのダメージを和らげてくれ、心地よく快適なブラッシングができます。

原料のラウリル硫酸ナトリウムは発泡剤の95~99%に使用されているといわれています。

一般的には「界面活性剤」と呼ばれるもので、油を水に溶かすことができ、シャンプーやボディソープにも使用されています。

近年ラウリル硫酸ナトリウムの安全性に関して、ネットや出版物で発がん性などについて多くの情報が氾濫していますが、これらに化学的根拠はなく、学会や公的機関により否定されています。

先進諸国が参加しているIARC(国際がん研究機関)でも発がん性物質に分類されていないので、過度な心配は必要ありません。

④粘結剤(粘度調整剤)

はたらき:歯磨剤をペースト状にする・磨き心地の向上・歯肉を傷つけにくくする

主な原料:カルボキシメチルセルロースナトリウム・キサンタンガム・カラギーナンなど

粘結剤に含まれる原料は水に溶けて粘性を与え、とろみを増したり、ゼリー状にしたりする性質なので、唾液にさらされても、ある程度の粘性を維持できます。

このはたらきのおかげで、歯ブラシと歯肉間の摩擦を軽減し、よい磨き心地を得ることができるのです。

また、チューブから押し出して容易に歯磨剤を歯ブラシにのせることができたり、ブラシ上で垂れたり落ちたりしないのも、この粘結剤のおかげです。

摩擦を減らすためにも比較的粘度の高い歯磨剤を選択して多めに使うように指導しましょう。

表記だけではわかりにくいので、患者さんに適したものを指導するためにも、日頃から多くの歯磨剤を試して粘度もチェックするようにしましょう。

⑤香味剤

はたらき:香りや味をつける・他成分の臭気をマスキングし、歯磨剤を使いやすくする

主な原料:さまざまな香味料

その名のとおり、香りと味の成分です。

香水は「フレグランス」と呼ばれますが、食品や歯磨剤など口に入るものの香味は「フレーバー」と名前を変えます。

香りは交感神経と副交感神経のバランスを安定させることから、お口の健康だけではなく、重要な気分転換にもなります。

また、香料自体の殺菌作用によって菌数レベルが減少し、さっぱりしたという自覚につながる場合もあるのです。

「香味剤の刺激が強いと唾液が多く分泌されるので、フッ化物濃度が薄まってしまうのでは」と心配されるかもしてませんが、いくら効能がよくても、使い続けられなければ意味がありません。

そのためにも、香味は楽しく心地よいブラッシング習慣を定着させるための動機づけになるともいえるでしょう。

⑥保存剤

はたらき:歯磨剤の変質を防ぐ

主な原料:パラベン類・安息香酸ナトリウムなど

安定した効能を長く保ったまま、空気中や歯ブラシ上の細菌がチューブ内に入っても腐らない性質を与えるはたらきをしています。

保存剤は歯ブラシを清潔に保つことに役立ってるのです。

歯磨剤は歯ブラシ自体の菌の増殖を防ぐはたらきもあり、歯磨剤を使用しない歯ブラシはしばしば植毛部の根元部分に菌が繁殖して黄色っぽくなっているのが見受けられます。

以上が歯磨き粉の基本成分になります。

上本町プラザ歯科ではさまざまな種類の歯磨剤を販売しています。

ぜひ一度当院にお立ち寄り下さい。


上本町プラザ歯科

大阪府大阪市天王寺区上汐4丁目1−33 フェンテ上汐1F
近鉄 上本町駅・地下鉄 谷町九丁目駅から徒歩5分
https://www.uehonmachi-plaza-dc.jp/


TOP