口腔がんについて③
大阪市天王寺区にある歯医者 上本町プラザ歯科の歯科医師山本です。
今回は前回に引き続き口腔がんについてお話します。
そもそもがんは何が原因で発生してしまうのでしょうか。
現時点で、がんになる要因には外的要因と内的要因があることがわかっています。
外的要因としては、発がん物質(タバコなど)、放射線、紫外線、ウイルス(ヒトパピローマウイルスHPVなど)、細菌(ピロリ菌など)、慢性刺激が、内的要因としては、遺伝的素因が挙げられています。
上記をふまえて、口腔がんの原因について見ると、これは他のがんについても言えるでしょうが、まず挙げられるのがタバコです。
実際、アメリカでは早くからタバコと口腔がんの関連について着目されており、タバコのパッケージなどで口腔がんの悲惨さを訴え続けたり、口腔がんの予防活動として禁煙がかなり進んでいます。
しかし、実は口腔がんの発症原因には、それ以上に重大なものがあります。
それが慢性刺激です。
通常、口腔がんが短期間で急に発症することはあまりありません。
たいていの場合、他の多くのがんと同様に、最低10年の期間を経てがん化すると言われています。
つまり、舌や歯肉、頬粘膜などに外部からの刺激が慢性的に加えられると、数年後、数十年後にがん化するということです。
実際、加工した葉タバコを頬に含んだり噛んだりして使用する、噛みタバコ(びんろう)の習慣がある南アジアの広い地域では、人々が罹患するすべてのがんの約3分の1が口腔がんであることが報告されており、継続した慢性刺激が発症原因であることが明らかになっています。
これまで、日本における口腔がん罹患患者の平均年齢が割と高齢だったことから、「口腔がん=高齢者のがん」と言われてきましたが、最近になって状況は変わってきています。
たしかに、口腔がん罹患患者の平均年齢は約65歳で、喫煙する方が大多数ですが、喫煙歴のない若年者にも口腔がんの患者さんが見受けられます。
実際、14歳女児の症例報告があるなど、最近では10代、20代の事例も頻発し始めています。
もはや、「喫煙者、高齢者のがん」とは言えなくなっているのです。
30歳以下の若い口腔がん、特に舌がん、の患者さんのほとんどに認められた口腔内所見が、臼歯の舌縁傾斜や鋭利な咬頭です。
彼らが小学生ぐらいの頃、つまり臼歯が萌出した頃から、10年、20年にわたって毎日その歯が舌を傷つけることで、慢性刺激となり、がんが発生していると推測できます。
また、日本における口腔がんでもっとも多いのは舌がんですし、さらにその発症部位の約半分が舌縁部であることをふまえると、舌の縁に慢性的な接触が続いている状態が、がんの発症につながっていることは明白でしょう。
臼歯の舌側傾斜や鋭利な咬頭のほかにも、口腔がんの原因になりうる口腔内の問題はさまざまあります。
このことは、年齢や性別、喫煙の有無にかかわりなく、このような問題を抱えている口腔内である場合、口腔がんの発症につながる可能性があることを意味します。
実際、かつては罹患患者の大多数が喫煙者、男性でしたが、最近では非喫煙者、女性の患者も増えています。
口腔がんの予防が進んでいるアメリカにおける啓発ポスターについても、こうした傾向を受けたものも作られています。
先述の通り、口腔がんの原因には慢性刺激が挙げられますので、歯科医院で口腔環境を整えて刺激源を除去することが重要です。
何かお困りのことがあれば、是非一度当院にご相談下さい。
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