顎骨壊死について②

   

大阪市天王寺区にある歯医者 上本町プラザ歯科の歯科医師山本です。

前回に引き続き顎骨壊死についてお話します。

顎骨壊死を引き起こすリスクのある薬は、BP製剤、デノスマブならびに血管新生抑制薬です。

薬によってもリスクはやや異なります。

特に注射製剤のBP製剤(ゾメタ®)やデノスマブ(ランマーク®)、血管新生抑制薬(アバスチン®)を使用している場合は注意が必要です。

一方、飲み薬のBP製剤や骨粗鬆症治療で使う注射製剤のデノスマブ(プラリア®)を使用している方の顎骨壊死の発現頻度は限りなく0に近いため、大きな心配はいらないと考えられますが、日本では飲み薬であっても注射と同程度かそれ以上に顎骨壊死が起きているという報告もありますので、注意はしておきましょう。

リスクは薬剤の使用期間とも関連しているようです(アメリカでは4年以上の服用で顎骨壊死の発症リスクが2倍になり、ヨーロッパでは36ヵ月以上の服用で顎骨壊死のリスクが高くなると報告されています)。

また、ステロイド製剤や抗がん剤などとBP製剤を併用して治療を受けている場合、BP製剤を単独で使用している患者さんよりも顎骨壊死の起こるリスクがとても高いことが報告されています。

かつては、これらの薬の使用を休止することで薬剤に関連する顎骨壊死を予防できると信じられてきましたが、最近の研究によれば、薬剤の使用を中止しても顎骨壊死の予防にはならないため、自己判断で使用を中止してはいけません。

特にデノスマブを使用している患者さんは、中止すると数カ月後にはリバウンド現象が起こり、薬剤を使い始めた頃よりもさらに骨密度が低下して骨折リスクが上昇するため、注意が必要です。

注射製剤のゾメタ®やランマーク®、アバスチン®を使用されている場合も、ご自身や歯科医師単独の判断で、絶対に薬剤の使用中止を医師に依頼してはいけません。

あらゆる歯科治療で薬剤関連顎骨壊死が起こってしまう可能性がありますが、特に歯を抜いた時にもっとも起こりやすく、顎骨壊死発症契機の60‐70%を占めると言われています(歯周病に関連する治療を受けた時が7%程度、インプラントに関連する治療を受けた時が4%程度)。

歯の神経の治療で外科的治療を受けた時などは特に注意が必要です。

一方、自然発症する場合も15%程度と多いので、ご自身でもお口の中の状態を観察しておくのがよいでしょう。

私たちもお口の中を拝見する時には十分に気を付けていますが、歯科治療中や歯科治療後には、ご自身でお口の中に気を付けていただく必要があります。

顎骨壊死が始まっている場合、患者さんご自身で気付く症状として「持続的な痛み」、「持続的な排膿(嫌な臭いが続く)」、「持続的な腫れ」、ならびに「持続的な骨の露出」などがあることがわかっています。

このような症状が2カ月以上(8週間以上)続く場合には顎骨壊死と診断されますが、一般的にお口のなかの傷は治りが早いことがわかっています。

抜歯をしたら通常10~14日程度でその傷はふさがります(骨が治るまでにもっと時間がかかりますが、傷がふさがってしまうので見た目は治ったように見えます)。

したがって、治療後2ヵ月を待たず、治療を受けて1ヵ月が経過しても上記の症状が改善しない場合には、すぐにご相談下さい。

がんの患者さんで高濃度のBP製剤やデノスマブを使用している場合、インプラント治療は原則禁止されています。

また、何らかの理由でステロイドを使用している患者さんは、ステロイド性骨粗鬆症を予防・治療するために飲み薬のBP製剤を使用する場合が多くありますが、この場合もインプラント治療は禁止されています。

デノスマブも同様と考えられます。

一方で、骨粗鬆症の治療で飲み薬のBP製剤を3~4年以上使用されている場合、インプラント治療による顎骨壊死のリスクが上がることがわかっていますので、禁止はされていませんが、顎骨壊死のリスクを認識していただく必要があります。

最近では、インプラント治療後にもインプラントの周りから顎骨壊死が起こることが、また、インプラント治療後にBP製剤の使用を開始した患者さんでもインプラント周囲に顎骨壊死が起こることが報告されました。

加えて、「インプラント周囲炎」という、歯周病に似たインプラント周囲組織の慢性炎症から薬剤関連顎骨壊死が起こることも報告されたことから、インプラント治療後の定期的なメインテナンスに通うことがとても大切になります。

 


上本町プラザ歯科

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